サーチファンドと一口に言っても、様々な類型があります。
例えば、米国では10~20人の投資家から資金を集める「トラディショナル型」と呼ばれるスタイルが主流です。一方、日本では投資家1社が必要資金をまとめて拠出する「アクセラレーター型」と呼ばれるスタイルが主流です。
それぞれのスタイルによって、また投資家によって、サーチャーに対して求める期待は異なります。これからサーチャーを目指す人にとって、自分の強み、やりたいこと、またキャリアプランに合うスタイルを理解しておくことは非常に重要です。
投資家からサーチャーに対する期待、サーチャーに求める役割について典型的なパターンを理解しておくことで、サーチファンドというキャリアの検討、また投資家選択の一助となれば幸いです。
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パターン①:投資先ソーシングを期待する投資家
一つ目のパターンは、「誰が経営しても失敗しない投資先を探してくること」を期待されるパターンです。これはトラディショナル型のサーチファンド投資家、その中でも特に海外の老舗のサーチファンド投資家に多く見られる印象があります。
このパターンの投資家は、比較的厳格な投資基準を持っていることが多い印象です。典型的な投資基準としては「成長産業における高シェア企業であること。ストック型の売上があることが望ましく、差別化された強みがあり、収益性が高いこと」といったものです。
そんな企業があれば誰もが投資したくなると言いたくなる基準ですが、このような企業を全力で探し、オーナーとの関係性を創り、よい条件で投資を実現することを、サーチャーに期待するのがこの手の投資家です。
裏を返すと、ある意味サーチャーの経営能力に対する期待値は必ずしも高くない場合もあるかもしれません。もちろんサーチャーによる経営によって、投資先の更なる成長が実現することへの期待もありますが、どちらかというとアップサイドとして捉えている印象です。
パターン②:投資先のバリューアップを期待する投資家
次のパターンは、サーチャーに投資先企業のバリューアップ(企業価値の向上)を期待するパターンです。アクセラレーター型の投資家は比較的このパターンが多い印象がありますが、トラディショナル型の投資家にも見られるパターンです。
投資先ソーシング~投資実行~経営というサーチファンドの一連のプロセスにおいて、投資先のソーシングや投資実行プロセスは、専門家である投資家がある程度サポートすることも可能です。しかし、投資先のバリューアップはサーチャーが主導するしかありません。
また特に日本のような成熟市場においては、放っておいても投資リターンが出るような業界や企業を見つけるのは簡単ではありません。このような市場において、一見すると投資が難しい企業でも、能力と覚悟あるサーチャーがコミットすることでバリューアップが実現できるという見立てができれば、投資を実現する大きなアドバンテージになります。
サーチャーには、「青い鳥を探す」のではなく、「青い鳥を創る」という意識や能力が期待されます。
この考え方に基づく投資家は、サーチャーの経営能力、つまり投資先のバリューアップができるかどうか(また、その視点で投資前に事業分析や経営計画策定ができるか)を、サーチャーに求める最も重要な要件として設定しています。
ちなみに、私たちサーチファンド・ジャパンはこのパターンに近い考え方で、サーチャー選考や投資をしています。
投資候補先の事業性を検討する中で、サーチャーから「この業界の一般論としてはそうですが、実はこの会社の●●は●●に使えるので、私ならこういうことができます」という投資ストーリーを聞くと、サーチファンドならではの投資ができる価値を感じます。
パターン③:長期的に会社を引き継ぐことを期待する投資家
投資家として必ずしも高いリターンは求めておらず、後継者のいない会社を引継ぎ、長期的に事業を継続させてくれる「後継者」としての役割をサーチャーに期待しているパターンも見受けられます。これは日本に特有のパターンかもしれませんが、特に地方銀行が主導する地域密着の投資家に見られます。
地域によっては事業承継の問題が深刻なケースが少なくありません。当該地域において、業種や企業によっては、経済的に大きなリターンを期待することは難しいかもしれませんが、地域企業や地域経済にとって重要な企業は存在します。そのような企業を存続させることには大きな意義があり、その観点での貢献、つまり地域へのコミットを期待されるのがこのパターンです。
このパターンでのサーチャーを目指す方は、具体的な対象地域や投資基準、現実的な投資候補先企業の数、また期待される時間軸等について、投資家との間ですり合わせておくことが重要になるでしょう。
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サーチファンドというキャリアにおいて、サーチャーと投資家は背中を預けあうパートナーです。どの投資家もそれぞれのビジョンや戦略があり、また得意な支援スタイルがあります。どの投資家も白か黒かどれか一つの期待値のみで投資をしているわけではありませんが、比較的どの要素が強いか傾向はあるでしょう。
投資家を選ぶ際に、自分と相性を踏まえて、安心して背中を預けられるパートナーかどうか、自分のキャリアビジョンに合っているかをしっかりと見極めることをお勧めします。そのためには投資家の話を聞くことはもちろん、各投資家から支援を受けているサーチャーの話を聞くことをお勧めします。同じキャリアを目指す同志として、忌憚なく投資家についての印象を話してくれると思います。