サーチファンドという言葉の誤用と乱用

サーチファンドという言葉の定義

 サーチファンドの生まれた米国Stanford 大学ビジネススクールによると「Search Fund」という言葉はこのように定義されています。

A search fund is an investment vehicle, conceived in 1984, through which investors financially support an entrepreneur’s efforts to locate, acquire, manage, and grow a privately held company.

※当社訳

1984年に考案されたサーチファンドとは、起業家が未上場企業の発掘、買収、経営、成長を目指すために、投資家から資金的支援を受ける投資ビークルである

出典:https://www.gsb.stanford.edu/experience/about/centers-institutes/ces/research/search-funds

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 つまりサーチファンドとは、M&Aを目指す個人(サーチャー)が投資家から支援を受けるために設立する法人/組合、またその法人/組合を通じてM&Aと経営を目指す活動のことを指します。 

 サーチファンドという言葉は、サーチ資金をファンディング(調達)してM&Aを目指すことに由来します。

サーチファンドという言葉の誤用

 昨今、ファンド=投資家というイメージからか、「サーチファンド=サーチャーに資金を拠出する投資ファンド」という言葉遣いも見受けられますが、これは誤用です。「●●会社がサーチファンド立ち上げ」、「経営者候補を支援するサーチファンド」といった表現が散見されますが、これは間違った使われ方なのです。

 私たちサーチファンド・ジャパンのような立ち位置にいる投資家は、「サーチファンドに投資する投資家」であって「サーチファンド」そのものではありません。

サーチファンドという言葉の乱用 

 サーチファンドによる投資活動では、あくまで経営者を目指す”個人”がM&Aと経営のプロセスや意思決定を主導します。

 実質的に投資家/ファンドがM&Aや意思決定を主導し、投資対象企業に応じて経営者候補を招聘/紹介するスタイルの投資は、サーチファンドではありません。

サーチャーという言葉の本質と乱用

 サーチファンドによる投資を主導する個人は「サーチャー」と呼ばれます。サーチャーの本質は、M&Aプロセスと経営において実務と意思決定を主導する、新しいアントレプレナーです。

一方、投資家/ファンドの主導する案件に招聘される経営者のことをサーチャーと呼ぶケースも見受けられますが、これは本来の「サーチャー」の主旨とは異なる使われ方と言えます。

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 第三者としての経営者/後継者による事業承継の仕組みには様々な形があり、それぞれのやり方に良さがあります。これからも新しい形が生み出されていくでしょう。

 様々な仕組みが生み出されていくことは良いことですが、「サーチファンド」という言葉を誤った解釈で使うことは、信頼に水を差すことにもなり兼ねません。サーチファンド業界の健全な発展のために、サーチファンドの正しい理解促進を心掛けていきたいと考えています。

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