サーチャーの孤独を癒すコミュニティ

 今回のコラムでは「サーチャーの孤独」について取り上げます。

 私たちサーチファンド・ジャパンでは、下記の3点から「サーチャーは孤独に陥りやすく、非常にタフなメンタルが求められるキャリア」だと考えています。

1. サーチ活動中は経営者を目指して原則一人で活動する

 サーチ活動中、サーチャーは原則として単独で、自らが承継したい会社を探し、投資資金を調達し、M&Aの実行プロセスを進めます。この全プロセスを一人で担う必要性に加え、「本当に自身が経営者として貢献できる会社に出会えるのか」という不安が常に付きまとい、サーチャーはこの不安と戦い続けなければなりません。

2. 外様社長として経営に参画する

 サーチファンドの仕組み上、サーチャーは承継した会社に外様社長として参画することになり、社内に知る者がいない状況で「社長」という立場に入っていくことになります。承継先の社員の中には「どんな人が社長になるのだろうか」と不安を抱く方も少なくありません。そのような環境下で、社員の皆様と信頼関係を築きながら、「社長」というトップの立場で会社を率いていくことは、非常に難易度が高いと認識しています。

 また、社長の真の悩みは人に相談できないことも多く、特に外様社長として会社に参画した直後は、社内の状況を十分に把握できない中で経営判断を迫られる場面もあり、タフな状況が続きます。

3. ロールモデルが不在である

 日本において、サーチファンドの仕組みでM&A/事業承継を通じて経営者を目指すサーチャーというキャリアは、まだ新しいものです。実際にサーチャーとして活動している人数も限られているため、確立されたロールモデルが存在するとは言えません。キャリア自体を自ら切り拓いていくという強い意志が必要となる一方で、周囲に同じ悩みを共有できる相手が少なく、孤独を感じやすい状況にあります。

 私たちサーチファンド・ジャパン(以下、SFJ)では、このようなサーチャーの孤独や不安を少しでも解消するため、サーチャー同士のコミュニティ形成を支援しています。

 もちろん、私たちSFJのメンバーもサーチャーに伴走し、手厚いサポートを提供していますが、サーチャーから見ればSFJは投資家/株主であるため、構造上、サーチャーとSFJのメンバーが完全に同じ立場に立てるとは限りません。このような背景から、私たちは「同じ立場で悩みや課題を共有できるサーチャー同士のコミュニティ形成」を促進し、サーチャーがお互いの経験や悩みを共有し、相談し合うことで、あらゆる場面でサーチャーが孤独に陥らないように工夫しています。

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SFJのサーチャーコミュニティ

 SFJでは、共に活動するサーチャー同士が交流する場として、サーチャー全体会やレクリエーションを開催しています。

 半年に1回の頻度で、SFJと共に活動する全サーチャーが集まる「サーチャー全体会」では、既に事業承継を終え経営者として活躍されている方から、サーチ活動を始めたばかりの方まで、様々なステータスのサーチャーが集い、先輩サーチャーのサーチ活動の実態や承継後のPMI経験、事業承継を終えて活躍している経営者同士の悩み相談など、多岐にわたるテーマで情報共有やディスカッションが行われます。

 具体的なトピックとしては、例えばサーチ活動を始めたばかりのサーチャーから先輩サーチャーに対して、

* 「どのように承継先のターゲットを絞っていったか?」

* 「承継先を決定した一番のポイントは何だったのか?」

* 「社長として承継先に着任する初日に具体的に何をしたか?」

といった漠然とした疑問から、具体的な実践内容まで幅広い質問が飛び出し、先輩サーチャーも自身の経験を丁寧に共有してくれます。

 既に経営者として活躍するサーチャーも、「初めての社長経験」という方が多いため、自社の社員には打ち明けにくい経営課題に対して、同じ経営者の視点からディスカッションできる場となっています。また、外様社長ならではの悩みに対しても、同じ経験を持つ先輩経営者からヒントを得られる機会にもなっています。

 SFJでは、このサーチャー全体会が全てのサーチャーにとって有意義な内容となるよう設計しており、全体会のようなフォーマルな場だけでなく、レクリエーションも開催しています。しかし、私たちが用意する場はあくまでも交流のきっかけに過ぎません。その場で親睦を深めた後、各サーチャーがサーチ活動や経営を行う中で困難に直面し、孤独を感じた際に、同じ仲間であるサーチャーと繋がり、孤独を解消できるような関係を育んでいってほしいと考えています。そして実際に、そのような機会が自然発生的にサーチャー同士で醸成されています。

 真に理解し合えるコミュニティとして、サーチャーコミュニティが今後も発展していくよう、私たちも陰ながら支援を継続してまいります。

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