Interview #
7
2024
年
6
月
小林和成
Kazushige KOBAYASHI
MCPアセット・マネジメント
マネージング・ディレクター
(伊藤)小林さんはMCPアセット・マネジメント株式会社に籍を移された後、その事業の一環として、東京都の事業承継FoF事業に参画されました。その背景についても教えていただけますか。
(小林)東京都は、事業承継問題の解決策として、以前からファンドに直接投資を行っていたのですが、東京都自身が個別にファンド投資を行うとどうしても機動性が落ちてしまうため、優秀なファンドマネージャーを選定しファンドへの投資判断を機動的に行えるためにFoFを設立し、そこに東京都が出資をする、という事業の公募を始めました。その事業に私の経験がお役に立てるのではないかと考え、MCPアセット・マネジメントとして応募をし、晴れて2020年に事業承継FoFの運営事業者に選定され、チームを組成した上でファンドの運営を開始しました。
(伊藤)事業承継FoFはどんな狙いをもって投資先のファンドを選定しているのでしょうか。
(小林)事業承継FoFの狙いは大きく2つです。1つ目は、東京都の大きな課題である「中小企業の事業承継問題」の解決に資するファンドに投資をすること、もう一つは中小企業への投資案件に対して丁寧に対応してくれるファンドを増やすことです。後者に関して言うと、先ほど述べた通り、スモールキャップとよばれる領域を手掛けるファンドをもっと生み出していきたいと考えています。
(伊藤)そのような中で今回当社が運営するTokyo Search Fundに事業承継FoFから出資をいただいたのですが、そもそもサーチファンドを知ったきっかけは何だったのでしょうか?
(小林)この事業承継FoFを進めるにあたり、どういったファンドに投資するか検討すべく様々な観点で調査をしていました。その中でアメリカにサーチファンドという仕組みがあるのを知り、日本でもサーチファンド投資会社が新たに複数立ち上がってきているのを知り、日本のスモールキャップの事業承継案件の解決に有効そうだなと思ったのがきっかけです。
サーチファンドの仕組みは中小企業投資を丁寧に行ってくれるという意味で、先ほど話した東京都の課題にも応えられる仕組みですし、サーチャーという「人が起点」の投資という意味では、後継者不在で困っている中小企業オーナーにとっても魅力的な選択肢の1つになると思います。他のPEファンドと比べても、この「人が起点」というのはかなり重要な点だと思います。
(伊藤)「人が起点」というのはまさにサーチファンドの特徴です。今回の出資に当たって小林さんにはその起点となる人である「サーチャー」にも数多くお会い頂きました。当社と活動するサーチャーに対して率直にどういった印象をお持ちですか?
(小林)アメリカのトラディショナル型サーチャー(※日米のサーチファンドの違いについて、詳しくはこちら)は、若くてビジネススクール出身、といったような典型的なプロファイルがありますが、私はそれに囚われすぎない方が良いなと考えていました。優秀なのはもちろん重要なのですが、あまり狭く限定してしまうと日本の中小企業の事業承継に適したサーチャー自体が見つかりにくくなる懸念があり、ターゲットを広げる必要がありそうだと思っていました。
その点でいうとサーチファンド・ジャパンのサーチャーは優秀なのはもちろんですが、年齢層も広く、バックグラウンドも様々な方がおり、人柄も含めて素敵な方々が多い印象を受けました。
(伊藤)ありがとうございます。私たちと一緒に活動するサーチャーをご評価いただけて嬉しいです。
そのようなサーチャーがM&A/事業承継をリードするサーチファンドの、通常のPEファンドと比較した印象についてお聞かせいただけますか?
(小林)日本の中小企業のオーナーは自分の会社を自身の子供のように感じているところがあり、オーナーが事業承継を検討するにあたり、自分が育てた大切な会社をちゃんと引き継いでくれる人がいるのかというのは非常に重要です。また、オーナーがいなくなった後に会社に残る従業員の皆さんとしっかりコミュニケーションをとらないと会社が回ってかないということを考えると、やはり日本のマーケットでは、「人が起点」の事業承継はマッチすると思います。
サーチャーはPEファンドの投資先に派遣されるプロ経営者と言われる人とも少し異なると思います。プロ経営者は、ファンド側が策定した事業計画や戦略を、きっちり実行するのが大きな役割で、良くも悪くもメリハリが効いています。一方サーチャーは、自身が承継したいと考える企業を主体的に探し、事業計画も自分で立案し、そしてなにより自分主導でM&Aと経営を行います。この違いによって、サーチャーとプロ経営者は、マインドの部分で少し異なるのかなと思います。
また、プロ経営者の方は経営経験が豊富な一方で、サーチャーは必ずしも経営経験がある方ばかりではありません。その中で、サーチファンド・ジャパンのような投資家は、やる気や人間力でその経験不足を補える方々を見極めつつ、一方で経験不足に対するリスクもしっかりとる投資をしていく、という考え方が大事になるかと思います。
(伊藤)ありがとうございます。サーチャーは、求められるマインドや能力の面でも、プロ経営者とも異なる新しいキャリアだと思いますね。
私たちサーチファンド・ジャパンのチームについても印象を伺えますか?
(小林)やはり第一には伊藤さんのお人柄が素敵ですよね。伊藤さんのこれまでのキャリア、投資経験や中小企業経営経験、は言わずもがなですが、周囲の方から様々なお話をお聞きするなかで伊藤さんの人柄の良さがひしひしと伝わってきました。そして何より伊藤さんご自身がサーチャー経験者であり、中小企業投資/経営に対して、地に足をつけて推進できる、ということに安心感を持ちました。
また、伊藤さんと一緒に投資を推進するチームも良いメンバーですし、かつポテンシャルもあるので、このチームであればすごく良いファンドになるだろうと確信を持っているところです。苦しく歯を食いしばらなければいけない時もあるかと思いますが、みんなが逃げずに同じ意識で頑張れるチームだと思います。更に、日本政策投資銀行、日本M&Aセンター、キャリア・インキュベーションの株主3社が実態的にサポートしている点も良いと考えました。
(伊藤)過分なお言葉ありがとうございます。最後に今後のサーチファンド業界、サーチファンド・ジャパンに期待することを教えてください。
(小林) 中小企業の事業承継問題にサーチファンドの仕組は非常に有効だと思うので、 サーチファンド業界自体がもっと大きくなっていくと思っています。そのような潜在性がある市場の中で、サーチファンド・ジャパンがサーチファンド業界のトッププレイヤーとして活躍するということを期待しています。それにあたって1番チャレンジなのは組織作りですね。同じ志やモチベーションを持ったメンバーと今後どのようにいいチームを大きくしていくかというところがやはり1番大きな課題だと思っていますので、しっかり見守らせていただきます。
(伊藤)今後私たちもいいチームを作りながら、サーチファンド業界でのトッププレイヤーとして活躍できるよう頑張ります。本日はお忙しい中お時間いただきありがとうございました。
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▼小林和成(MCPアセットマネジメント マネージング・ディレクター) インタビュー
vol.2 | PEファンドマーケットの開拓者がサーチファンド・ジャパンに投資した理由